新宴なるesportsの世界

世間的にまだ認知の低いesportsについてわかりやすく、でも奥深い世界の一端を説明できればと思っています。

esportsの歴史

esports(プロシーン)としての発展は2000年代に始まっています。厳密にいうと、アマチュアのゲーム大会はそれ以前から頻繁に開催されていました。古くは1972年にスタンフォード大学でゲーム大会が行われたという記録もあります。

 

2000年代になぜプロシーンとしてのesportsが発展し始めたのか、それはブロードバンドの普及と1997年のアジア経済危機による失業率の高かった若者がゲームに熱中し、その中からプロシーンが韓国で生まれたからです。ちなみにこの時のタイトルはStar Craftです。

 

また2010年くらいから欧米を中心としてesportsの盛り上がりが加速していきました。これはリーマンショックやヨーロッパ経済危機を背景として、失業率の高まりによりやはりゲームに熱中する若者が増え、esports運営団体や大会が生まれてきたのです。英語版Wikipediaのesportsによると2000年に10大会だったのが、2010年には260大会が開催されたそうです。つまり、esportsの盛り上がり・普及には実は不況によって生まれた若者パワーが大きく影響を与えているのです。ちなみにこの2010年以降のesportsの盛り上がりをうまくとらえたのが、MOBAというジャンルで代表的なゲームのDOTA2やLeague of Legendsが上げられます。

 

興味深いのは、例え不況を脱出したとしても、esportsはその後も成長を続けているところです。これは10代から20代の男性に強く支持されているからという点もあるが、筆者の見立てではゲームという自分にとって身近なものがプロシーンとして放送されていることに、伝統的なスポーツやTV番組よりも面白いと感じる層が増えていることが要因であると考えています。伝統的なスポーツは、金銭的な面、保護者の負担の面などで、本当に打ち込めるほどできる人は限られてきています。一方で、ゲームはそういった参入障壁が低く、多くの人が経験するためより身近に感じられるのだと考えます。

 

実際に、NFLの視聴率が低下し、その要因としてesports (online streaming)の影響が指摘されています。原文は英語。以下はその記事からの世代別の表。若い人ほどesportsに流れていることが見てとれます。

 esports survey

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日本でのesportsの今後は

さて、この歴史を踏まえたうえで、日本においてesportsの歴史を振り返って考えると、同じような不況はあったものの(90年代後半の金融不況、08年のリーマンショック)、esportsが他国ほど盛り上がることはありませんでした。この点については普及していたゲームのタイプの違いによることが大きいだろうと思います。海外でesportsの基盤となったタイトルはオンラインPCゲームで、戦略性の高いゲームでした。対して日本ではコンソール(プレステとかWiiとか)がゲームとしては主流であり、パッケージとして販売されたゲームにおいて、最初の回で述べたようなバランス調整を頻繁に行うのは難しく、競技シーンとしてのesportsを成立させるのが難しく、また、ビジネスモデルとしても売り切り型であり、esportsのようなやりこんだプレイヤーをもてはやす施策がIPホルダーからの協力を得ることが難しかったのも一つの要素だと考えられます。

 

しかし、世界的な流れや日本でもスマホゲームを中心としたオンラインゲームの普及、また、パッケージゲームでもアップデートが可能となったことから、日本でも様々な関係者からesportsへの関心が高まっています。実際JeSU(日本eスポーツ連合)に登録されているタイトルを見ると、パズドラやモンストといった過去に大ヒットしたスマホタイトルが入っています。

 

果たしてesportsは定着し盛り上がるのか?2018年の現状では、大卒就職率が98%という状況から韓国や欧米での発展につながる盛り上がりはみえにくいです。むしろ、現在esportsを盛り上げたがっているのは、ゲーム会社や業界の人ではないでしょうか。しかし、本当の意味で日本でesportsが盛り上がるかの答えは2020年代に見えてくると思われます。その理由としては、2020年後の東京オリンピック後に経済が減速すると見込まれていて、その不況の程度と若者の就職率が海外でもあったようにesportsの盛り上がりに影響を与えるからです。若者の失業率が高まるようであれば、esportsの飛躍につながるであろうと思います。一方で、日本は少子高齢化社会から労働者不足が懸念されており、それにより若者の就職率が高いままであれば、esportsの盛り上がりを構成する若者の熱狂は生まれにくいでしょう。

 

このように、esportsの盛り上がりのきっかけは経済状況によるところが多いです。そう聞くと「人の不幸によって盛り上がるのか」と思われるかもしれませんが、経済不況はサイクルとして避けられず、その時に人が持つエネルギーの集約場所として、受け止め場所として、esportsというのがここ2000年代から重要な役割を果たしていると考えられます。また、単に不況は盛り上がりのきっかけに過ぎず、その後も成長していることを考えると、きっかけはともかくとして若者の熱狂を継続的に集められるのがesportsだとも言えます。

 

それでは次回からesportsに携わる関係者の紹介をしていきたいと思います。